2015年7月21日火曜日

日渡早紀先生の「アクマくんにお願い」

今回は、日渡早紀先生の「アクマくんにお願い」についてです。
日渡早紀先生と言えば代表作は通称「ぼくたま」の「ぼくの地球を守って」です。1986年12月20日発売の花とゆめ2号から1994年5月20日発売の花とゆめ12号まで連載された大人気マンガです。その連載第1回目は記憶鮮明・東京編の近未来サスペンスとして花とゆめ読者の大きな期待を背負って始まりました。巻頭カラーで、花とゆめコミックス1巻のカバーにも使用されたヒロインありすが地球を抱いた扉絵が印象的でした。しかし、雑誌掲載時に「ぼくたま」を読んだファンの方はご存知の通り、連載1回目は気弱なありすが小学生輪にいじめられてしくしく泣くだけの「これのどこが近未来サスペンス?」という内容でした。たしか、そんな読者の気持ちを感じとったかのように読者のために柱にフォローの一文が載っていた記憶があります。「これから近未来サスペンスになりますからね!」というような(笑)
そんな大きな期待とは裏腹に、私は「ぼくたま」が8年に渡る長期連載になろうとは思ってもいませんでした。なぜなら、日渡早紀先生には、他に「アクマくんシリーズ」があったからです。「アクマくんシリーズ」は1982年5月4日発売の花とゆめ11号に発表された「アクマくんにお願い」で主人公史郎が開けた缶詰めから悪魔の王子「アムカ」が出てきて史郎の願いを叶えようとしてくれる読み切り作品からシリーズ化されました。1982年1月20日発売の花とゆめ4号に発表された日渡早紀先生の受賞作でありデビュー作の「魔法使いは知っている」のシリーズ化「早紀ちゃんシリーズ」と並んで人気のあった作品で、交互に花とゆめ誌上に発表されていました。1985年1月7日発売の花とゆめ3号の「無限軌道」で「早紀ちゃんシリーズ」が完結し、「アクマくん魔法☆BITTER」が1985年7月20日発売の16号から1986年7月5日発売の15号までの約1年に渡る連載を終え、1986年9月5日発売の花とゆめ19号と9月20日発売の花とゆめ20号で「アクマくん魔法☆SWEET」が前後編で発表された後、いよいよアクマくんシリーズが完結に向かうと予想され、「ぼくたま」はその間に挿入された作品だと考えたからでした。
結局のところ、「ぼくの地球を守って」が大人気作品となり長期連載された結果、日渡早紀先生の絵柄も大きく変化し、また「アクマくんシリーズ」を覚えている読者も減り、残念ながら「アクマくんシリーズ」は未完の作品となったのでした。
個人的には、アムカ王子に想いを寄せる悪魔として育てられた天使チャチャが、アムカと両想いになれるといいなという希望と、15番目の王子であるアムカが魔界の王になる?という物語を、日渡早紀先生がどのように描いてくれるのか、その期待に応えてくれる作品はもう望めないということが残念でなりません。
手元にマンガがないのでセリフはうろ覚えなのですが、「アクマくんにお願い」では、アムカに願い事をした史郎が思い通りに行かないことでアムカを責めると「それは願い事じゃなくって欲だろう。自分でやってくれなきゃ困るよ」というようなことを言うシーンがあって、それがとても印象に残っています。また、早紀ちゃんシリーズの「魔法使いは知っている」でも、異次元からひょいと教室に顔を出したヒロイン早紀が、ルービックキューブを見事にクリアできる星野くんに助けを求めて一緒に異次元へ連れて行くシーンが印象的でした。繰り返し読んだわけではないのに33年前の記憶が残っているほどインパクトの強い作品であり、そういう作品を次々生み出す力のある日渡早紀早紀先生は私にとって偉大なマンガ家であると言えます。また、多くの人にとってもそのようなマンガ家であると思います。
2015年7月21日(火)