2015年7月10日金曜日

清原なつの先生の「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか」

江口寿史先生の話を書いて、高校時代のマン研に触れたので、もう少し当時について書きます。
1985年4月~1988年3月まで高校生だった私は、マン研で仲間たちと楽しい時間を過ごしました。その頃、私たちの中で流行したものは、菊池秀行先生の小説に天野喜孝先生の挿絵の入った「バンパイアハンターD」、高千穂遥先生の小説に安彦良和先生の挿絵が入った「クラッシャージョー」「ダーティーペア」(どちらもアニメ化されました)、それからSF実写映画(SFXですね)ジョージ・ルーカス製作総指揮の「スターウォーズ」、リドリー・スコット監督のSF映画「ブレードランナー」でした。マン研の誰かの家に上がり込み、レンタルビデオの上映会をやったものでした。
この1882年に日本で公開された映画「ブレードランナー」は原作小説がフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」で、映画では「スターウォーズ」にもハン・ソロ役で出演したハリソン・フォードがリック・デッカード役で主演したSF作品です。原作小説では動物を飼うことが一般的であり、未来の世界において本物の動物を飼うことがステータスとされていて、庶民は電気仕掛けの精巧な動物を飼っています。指名手配のアンドロイドを狩る賞金稼ぎの主人公リックは電気羊を飼っていて、電気羊の故障からリックと妻は口論となり本物の動物を手に入れる為に賞金を欲してアンドロイドを追うという話です。ですが、映画ではアンドロイドを追うリックは独身で、動物も出て来ません。つまり、アンドロイドを狩る賞金稼ぎと逃げるアンドロイドの物語なのです。そのアンドロイドが人間そっくりで、人間かアンドロイドかの見分けが難しいという所が、小説でも映画でも、そしてパロディマンガ、川原泉先生の「アンドロイドはミスティ・ブルーの夢を見るか?」と清原なつの先生の「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか」でも共通しているところです。

なつめ
「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか」のヒロイン&量産型アンドロイド

さて、清原なつの先生の「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか」は、今はなき少女マンガ雑誌ぶ〜けに1987年3月号に掲載された読み切り作品です。同年11月にぶ〜けコミックスとして「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか」が発行されています。パロディと言ったものの、原作のタイトルをもじってタイトルに使用したこと、人間との見分けが難しいアンドロイドという設定、そして映画で注目された1シーン、「強力わかもと」の看板がある風景とうどん屋のシーンを描いた以外は全くの別物です。
映画「ブレードランナー」では、アンドロイドにも感情があるように描かれていますが、清原なつの先生の「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか」でのアンドロイドの扱いは手塚治虫先生の「鉄腕アトム」や清水玲子先生のジャックとエレナのシリーズで描かれた、感情を持ったロボットとは異なります。アンドロイドはあくまで人の形をした機械で、それを扱う人間の問題を描いています。49ページの短編作品ですが、アンドロイドと人間の関係性において、考えさせられるものがあります。

他に、清原なつの先生と言えば、少女マンガ雑誌りぼんオリジナルに1981年に掲載されたSF作品「真珠とり」が今でも名前が挙がる作品だと思います。1990年〜1994年にぶ〜けで読み切りの形で連載された性をテーマに描かれた「花図鑑」は、ぶ〜けコミックスワイド版で全5巻ですから、これが一番長く描かれた作品だと思います。それから2004年に発行された千利休の生涯を描いた「千利休」、この3作あたりが代表作といえるでしょうか。「千利休」は評価の高い作品なのですが、残念ながら読んでいません。

最近は作品を発表されているか分かりませんが、古い作品でも十分面白いと思います。清原なつの流のユーモアと含蓄のある内容が、どの作品にもしっかりと表現されているマンガ家さんだと思います。