2016年5月11日水曜日

吉野朔実先生のこと

4月20日、吉野朔実先生が57歳で病気でお亡くなりになりました。
「月下の一群」大好きでした。ヒロインが「ミシンは苦手なの」と手縫いでチクチクと夜なべして裁縫をするシーン(カーテンを縫うんだったかな?)が、特に重要なシーンでもないのですが一番に思い出されます。

代表作は「少年は荒野をめざす」「ジュリエットの卵」でしょうか。
個人的には、「ぼくだけが知っている」「恋愛的瞬間」が好きで、今も本棚にあります。
この2作品は「心理学心理学している」と感じるのです。
雨が降ることを知っている「僕」や「先生」のカウンセリングルームを訪れる人々に惹かれます。

既に手放してしまいましたが、吉野朔実先生の「天使の声」は、水樹和佳先生の「イティハーサ」や内田善美先生の「星の時計のRiddle」と同様のハードカバーのしっかりした本でした。内容はうろ覚えですがカセットテープが効果的な小道具として印象に残っています。その「天使の声」は、どこかの評論で「物語がご都合主義」というように批判されていました。でも、私は物語の整合性や辻褄は吉野朔実先生の作品では重要ではないと感じていて、その批判に違和感を感じたのでした。
吉野朔実先生の作品はどれも独特の世界がありながらもしっかりした内容ですが、私にとっては「その美しい雰囲気を味わう」ものでした。
まだまだ、その美しい世界を味わいたいと思っていましたが、叶わぬこととなりました。

吉野朔実先生のご冥福をお祈りいたします。
2016年5月11日