2015年9月4日金曜日

少女マンガと心理学と司書と

司書資格の情報サービス論のテキストを読んでいたら、あれ?と思い手が止まりました。レファレンスインタビューに有用とされる技法でコーチングについて書かれていたのです。ペーシングとかミラーリングとか、コーチングでなくてもカウンセリングで使われる懐かしい技法について書かれていました。

私が、カウンセリングの学校で心理療法を学び通信の大学で心理学を学んだのは30代の頃。勉強がとても楽しくて、周りには心理学やカウンセリングに意欲的な仲間がたくさんいて、本当に楽しい時間を過ごしました。みんなが「カウンセラーになる」と言っていて、事実開業した友人やカウンセラーの団体に所属して精力的に職業としてカウンセリングを行っている友人もいます。私もカウンセリングを仕事にしようと一時期は本気で思っていました。多分、私でもロジャースの来談者中心療法なら未熟ながらカウンセリングができるでしょう。しかし、私は30歳で自分自身を見つめ直す必要があったほど暗雲のたれこめた20代を過ごし、人と積極的に関わろうとするほど健全な精神構造を持っていません。カウンセリングはできても、比重を増すクライエントの依存に耐えられなくなるのです。これではカウンセラーは務まりません。私には、心理カウンセリングはできないということがわかりました。

試行錯誤というのか紆余曲折というのか、周りからも勧められて図書館司書資格を取得することになったのですが、司書の勉強をしてみると、司書に重要なレファレンスサービスにはコミュニケーションスキルが必要で、カウンセリングの技法が有用とあるではありませんか。私は一瞬呆然としました。これは、なんでしょうか?私に心理学から離れるなという神様の啓示でしょうか?まぁ、ただの偶然なのですが…。

少女マンガにも心理学的な側面を強く感じるものがあります。三原順先生の「はみだしっ子」では、自閉症児のクークー(マーシア)が出てきますし、グレアムの精神は雪山事故で現実から乖離します。一条ゆかり先生の「砂の城」のナタリーも愛するフランシスを失うかもしれないという不安に圧し潰され、流産によって現実を受け入れられなくなります。「残酷な神が支配する」や「バルバラ異界」を読むと、萩尾望都先生自身が心理学に精通されていることがとてもよくわかります。これらに描かれた非日常的でドラマティックな世界でなくとも、少女マンガは人の心理を細やかに描き出すことを得意とし、その描写の妙に唸らされることがしばしばあります。

結局、私は小さい頃から少女マンガの影響を強く受け、カウンセリングには不向きですが心理学が好きなのです。司書がカウンセリングの技法に助けられて行うレファレンスインタビューは心理カウンセリングほど深刻ではありません。利用者の求めるものに気づき、物事にこだわって情報を探し出すという作業は案外私に向いているかもしれません。兎にも角にも、司書の勉強を真面目にして、きちんと資格を取ろうと思います。
2015年9月4日(金)