2015年10月21日水曜日

17歳差カップル『私を月まで連れてって』

福山雅治さんと吹石一恵さんは13歳差、10月から始まったNHKの朝の連続ドラマ「あさが来た」は11歳差の年の差婚でそれについて考えていると、そういえば少女マンガの世界にも年の差カップルがいたなぁと思い当たりました。竹宮恵子先生の『私を月まで連れてって!』です。とは言っても、こちらは物語の中で結婚はしていないのですが。

竹宮恵子先生のSFマンガの代表的な作品といえば『地球へ…』『アンドロメダ・ストーリーズ』『私を月まで連れてって!』の3作品です。『地球へ…』はアニメ映画化、その後TVアニメ化もされた人気作で、超能力を持つ異分子として排除される人間「ミュウ」がソルジャー・ブルーのもとに集まり、やがて少年ジミーがブルーの遺志を継ぎ、仲間と共に宇宙船で地球を目指す物語です。『アンドロメダ・ストーリーズ』は光瀬龍先生原作の物語を竹宮恵子先生が美しい絵で表現した名作です。アンドロメダ星雲の小さな惑星に生まれた双子の男女が別々に育てられ、やがて機械に支配された国から逃げる中で出会い、惹かれ合って結ばれ、最後にはまだ生命の生まれていない惑星地球の海に落ちて生命の源になるという物語です。24時間テレビの中でアニメ化され放送されました。『地球へ…』『アンドロメダ・ストーリーズ』のどちらも、シリアスな物語で広大な宇宙を舞台にしています。

一方、『私を月まで連れてって』は、SFラブコメディで、その第1作目は読み切りとして発表された『夢見るマーズポート』です。「私、まだ本当の恋をしたことがないの」という美しい女性ニナ・フレキシブルは、17歳年上のA 級宇宙飛行士、ダン・マイルドが婚約者です。物心ついた時から何故かダンと結婚すると自分で決めていました。ひょんなことから過去に飛ばされたニナはマーズポート(火星の宇宙ステーション)でほんの短い時間出会った若者に恋をしますが、その相手は若き日のダンでした。元の時間に戻る前に生まれたばかりの自分に「あなたの恋人はダン・マイルド」と囁きます。ロバート・ヤングのSF短編小説『たんぽぽ娘』を下敷きにしたロマンティックSFで、古典SF好きにはたまりません。また、ジャズの名曲「Fly Me to the Moon」が流れるところも素敵です。
本格的な連載に入ると、ニナは10歳の可愛い超能力少女、ダンは27歳の宇宙飛行士という設定で話が展開していきます。二人は恋人同士で同じメゾンの住人として家族ぐるみの付き合いをしています。ダンは独り身の一人住まいですが、有能なハウスキーパーお八重さんがいます。
ニナの兄アーチーが作ったロボット”サブリナ”は、抽象的な指示を理解できず無能なロボットの烙印を押されますが、お八重さんの的確な指示で有能なロボットとしてお八重さんの手伝いをします。「私は、コンプレックスのある人間が好きなんです」とロボットのサブリナにコンプレックスをインプットするお八重さんは、美人ではありませんが何でもできるスーパーレディです。『私を月まで連れてって』は個性的で魅力的なキャラクターが次から次へと出てきますが、中でもお八重さんは竹宮恵子先生のお気に入りのキャラなのではないでしょうか。
最終回はお八重さんが財閥の総帥ハリアンのプロポーズを受け結婚するお話でした。お八重さんとハリアンの息子ブライトが主人公の「ブライトの憂鬱」という続編マンガも白泉社から出ています。
最近は少女マンガでSFはあまり見かけなくなりました。『私を月まで連れてって』は、次から次へとSFならではの事件が起こるSFコメディの決定版!17歳差カップルの素敵なマンガです。
2015年10月21日(水)